To The Moon
カナダのデベロッパ ー・Freebird Gamesが手掛けたアドベンチャーゲーム 。もともとは2011年にPCでリリースされ、実に9年の時を経てSwitch版が2020年に配信となった。
思い残すことなく人生最後の時を迎えてもらうため、その人が叶えたかった夢を記憶の中で叶える、というストーリー。プレイヤーは、人の記憶の中に入れる技術を持った職員を操作することになる。
そして作中で記憶に潜る相手は、「月に行きたい」と願う老人。今にも息絶えそうな老人の記憶の中に入り、あの手この手を尽くして記憶の書き換えを目指す。
このゲームは「RPGツクール 」で制作されており、グラフィックはまさに“あの感じ”を踏襲している。前時代的とも言っていい。また戦闘があるわけでもなく、ストーリーを読み進め、たまにパズルを解くくらい。ゲームとしてはかなりシンプルだ。
しかしそんなことどうだっていいのだ。このゲームの中に流れる永遠のような時間と音楽、そして音楽。どれをとっても素晴らしく、12ヶ月経って今でも鮮明に思い出せる。スクリーンショット の1枚を見ただけで、美しい結末がフラッシュバックして鳥肌が立つ。体験としてのゲームだ。
老人はなぜ「月に行きたい」と願うのか、その裏に隠された秘密とは…。
SFであり、ファンタジー であり、恋愛であり、青春でもある。これを体験できる。だからゲームはすごいんだ。
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グノーシア
2019年にPS Vita向けに発売されたアドベンチャーゲーム をSwitch向けに移植した作品。PS Vitaは2019年の時点ではっきり言って死に体で、このゲームもSwitchでようやく日の目を見るチャンスを得たと言っていい。
本作は宇宙船を舞台に、人狼 ゲームを1人で何度でもプレイできるのが特徴。一癖も二癖もある仲間たちの中から、人狼 である”グノーシア”を見つけていく。ルールや参加人数はプレイする度に変わり、時にはプレイヤー自身が人狼 として、仲間だったキャラク ターを手に掛けることも。
そして、何度も何度も人狼 ゲームを繰り返すうちにストーリーは進み、宇宙船でなにが起こっているのかが明らかになっていく。
人狼 ゲームはかなりガチで、ベストを尽くしても負けてしまうことがしばしば。とはいえ1周が10分~15分くらいなので、ストレスを感じることは少ない。というか、謎が謎を呼ぶストーリーと、異常なキャラク ターの異常なセリフを前にしたら、途中でやめる選択肢はまず生まれない。エンディングを迎えるための、極めてゲーム的な演出も見事だった。
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BEYOND BLUE
広大な海を探索する海洋アドベンチャーゲーム 『BEYOND BLUE』。色鮮やかな海中を舞台にした『ABZU』、クラフト要素を詰め込んだ『Subnautica』など色々あるけど、本作はあくまでリアル志向。それもそのはず、本作は「ブルー・プラネット」などのドキュメンタリーで知られるイギリス公共放送・BBC 協力のもと制作されたのだ。
プレイヤーはマッコウクジラ の調査をする科学者となり、潜水スーツを身に着け自由に海を探索する。美しいサンゴ礁 や楽しげなイルカたちもさることながら、一番の魅力はやっぱり怖さだと思う。
自分より何倍、何十倍もあるクジラが間近に迫る怖さ、少しでも深く潜れ ば暗闇になる怖さ、得体の知れない生物と遭遇したときの怖さ。海の中できっと出会うであろう恐怖の数々を疑似体験できる。同時に、独特の恐怖から抜け出して調査船に戻ったときの安心感…。
このジャンルでは、かつてPS3 で発売された『AQUANAUT’S HOLIDAY』以来の会心 作。
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空飛ぶ敵をロックオンしたときカメラがグニャグニャ動くのは本当にどうにかしてほしいと思いつつ、それでも『ファイナルファンタジーVII リメイク』を、2020年を代表するゲームに入れないのはちょっと難しい。
言わずと知れた『ファイナルファンタジーVII 』を、2020年のゲームとしてリメイクした作品。しかしリメイクと言いつつストーリーはかなり変化が見られ、リスタートとか違う呼び方のほうがふさわしい気がする。
変化を加えて新しい驚きを与えたストーリー、コマンドにちょっとしたアクションも加えたバトルシステムは高い次元でまとまっている。
そして何より素晴らしかったのがミッドガ ルの再現具合。昔は想像力で補っていたミッドガ ルの錆びついた町並みが、違和感なく表現されていた。
だから僕は言いたい。もっと先の街も見たかったよ。ワールドマップがどうなるかも見たかったしユフィも見たかった。
「分作でよかった」なんて納得したくもないけど納得せざるを得ないのが現状である。だからせめて、この先のロードマップを見せてほしい。このゲームの問題点は、不満はないのに不安がつきまとうことだ。
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Ghost of Tsushima
『アサシンクリード ヴァルハラ』や『サイバーパンク 2077』、あるいは『The Last of Us Part II』がしょーもない理由で評価を落とす中、『Ghost of Tsushima』は裏切ることなく約束を果たした。
鎌倉時代 の対馬 を舞台にしたこのオープンワールド ゲームは、“普通に面白い”を極限まで研ぎ澄ましたような作品だ。
これまでのオープンワールド と比べて、ずば抜けたなにかがあるわけではない。メインミッションを繰り返してるうちに飽きてくる、オープンワールド 特有の弱点もそのままだ。
しかし、日本人だから分かる日本の空気感、『七人の侍 』を意識したストーリーライン、一騎打ちにチャンバラ、ステルスキルまで自由に選べる戦闘。そのどれもが的確で、きれいに組み立てられている。
海外のスタジオが、日本を舞台にしたゲームを作るなんてアウトロー な企画が、結果的にとても優等生的作品に仕上がった。上述の通り、問題作の悪い面がクローズアップされがちな2020年のゲームシーンにおいて、とても貴重な存在だったのは間違いない。
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ori and the will of the wisps
いつまで経っても『Hollow Knight: Silksong』が発売されないメトロイドヴァニア 界隈にとって、『ori and the will of the wisps』がSwitchで発売されたのはある種の救いだった。
前作『オリとくらやみの森』のアクションを踏襲しつつ、砂に潜ったり、水中を素早く泳いだりといった新要素が追加された。行けなそうで行ける場所が増え、それに伴い行けそうで行けない場所も増えた。メトロイドヴァニア は数あれど、ここまで探究心をくすぐるゲームはなかなか出会えない。
ボスとのバトルというのも、前作以上にフィーチャーされていると感じた。前作が棘の床をいかに回避するか、みたいな「スーパーマリオ 」的アプローチがメインだったが、これにボスバトルというプラスアルファが加わった。
難易度は全体的に高めだが、ロードもないのでリトライにストレスはかからない。そもそもこのジャンルで難しさを気にする人はいないと思うが。
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無双シリーズ 不毛の地、海外でも売れてるらしい。それはゼルダ がゼルダ である所以でもあるのだけど、売れたこと以外にもこのゲームが世に送り出された意味はあると思う。
本作では、2017年発売の『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド 』から100年前に起きたことが描かれる。より正確に言えばifストーリーなので、100年前になにが起こったかを描きつつ、決して悲しい結末にはなっていない。
ifではなく、なぜ100年後があんな荒廃した世界になってしまったのかを克明に描いてほしかった人もいると思う。というか僕もその1人だけど。
でも正直そんなことはどうでも良くて、『ブレス オブ ザ ワイルド』のグラフィックで、あの世界を、あのキャラク ターたちが活躍してくれることに意義があるのだ。あのワールドマップを見て、まだこの世界を冒険したいと思わせたから、このゲームは勝ちなのだ。
現在制作中の『ブレス オブ ザ ワイルド』続編が生まれる前に僕達の目の前に現れた『ゼルダ無双 』。本編前のスピンオフとして、こんなに完璧なゲームあっただろうか。
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DIY を作成するときのUIとか、手に入れたアイテムの管理とか不便なところもたくさんある。そんな不満点を圧倒的な物量と、コミュニケーションという人類最大の娯楽でねじ伏せた快作であり怪作。
捕まえられる虫や魚の数がまず膨大で、1ヶ月ごとに変化があるんだからまったく追いかけられない。それに加えてDIY のアイテムまであるから、きっとコンプリートという言葉自体が存在しない。圧倒的な物量である。
そして自分の島にほかのプレイヤーを呼び、時にはこちらから訪問するコミュニケーションがある。
別に自慢し合うだけじゃない。腐ってしまいそうなカブをほかの島で売りさばき資金を集める、生活のためのコミュニケーションも確実に存在していた。僕自身全然知らない人に助けてもらった。
僕は、傑作を傑作たらしめるのは文脈だと思っている。レディオヘッド の「キッド A」が最高傑作と言われたのは、20世紀の最後に音楽の未来を提示したからだ。作品のクオリティと、「20世紀の最後に~」の文脈が噛み合ったことで傑作に昇華したのだ。
『あつまれ どうぶつの森 』もまた、新型コロナウイルス で人とのコミュニケーションが希薄になった時代に生まれた、という文脈を持つ。生まれるべくして生まれた傑作なのだ。
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A Short Hike
アメリ カのインディーメーカーのWhippoorwillが手掛けるアクションアドベンチャー 。初代PSライクなちょっと粗いグラフィックの箱庭を自由に探索し、中央にそびえ立つ山の頂上を目指す。
一応頂上を目指す過程で困っている住人を助けたり、アイテムを集めたりといった行動が必要になるものの、難しさは一切なし。ひたすら自由で、どんな順番で箱庭を巡ってもいい。
また主人公のクレアが小鳥なのもポイント。羽ばたいて滑空でき、それがしがらみとは無縁のハイキングに拍車をかけている。とにかく快適で、どんな行動も苦にならない。
ちなみにこのゲーム、ボリュームとしてはかなり短く、2、3時間程度で終わる。だけど満足度はかなり高い。約2時間かけて、小鳥のクレアのちょっとしたロードムービー を鑑賞した。そんな気持ちにさせてくれる。
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22/7 音楽の時間
やや頭打ち感のあるスマートフォン の音ゲー だけど、そんなことお構いなしに2020年もたくさんの新作がリリースされた『プロジェクトセカイ カラフルステージ!』も『D4DJ Groovy Mix』も、本当にあの手この手だ。
そんなアプリのシーンにおいて、『22/7 音楽の時間』はバカ正直なくらいスタンダードな作品として誕生した。
例えば『D4DJ Groovy Mix』であればタップだけでなく画面下のスライダーも逐一動かさなくてはならない。一方『22/7 音楽の時間』は、タップとスクラッチ 、あとは押しっぱなしのロングノーツがあるだけ。
それでも僕が10作品の一つに選んだのは、複雑さではなく遊びやすさに思い切って舵を切った点と、ファンコミュニティを信頼した点。
たぶんこれ、以前からのファンがついてこなければ一瞬で終わってたでしょ。ストーリーでは最初の世界観説明を省き、その代わりとしてキャラク ターの個性を最大限に活かす。ちょっとしたセリフややり取りも、アニメを見て、人となりを知っているとより楽しめる内容。
どちらかというと音ゲー ファンではなく、22/7を愛している人に向けて作られたゲーム。だからGOODでもコンボが継続する手軽さは理にかなっているし、実は計算されたシステムなのではと思う。
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