2018年にソロとしてデビューして、これが合計3枚目のアルバム。エレカシ時代から速いときはものすごいペースでリリースを重ねる人だったけど、55歳になってもまったく衰えない。
せっかくのソロなのだからと、新しいことに挑戦する姿が今回も随所に見られる。ミスチル櫻井和寿とのコラボはまさにその象徴だし、NHK「みんなのうた」に提供した楽曲もある。アルバムタイトル通り、縦横無尽の姿だ。
しかしその奥底に光るのは、エレカシ時代から変わらないロックブルースの形。どこか物悲しく、それでも前へ進む姿。
昨年末、紅白歌合戦に宮本は出演した。真っ暗な東京湾、1人佇み「夜明けのうた」を歌った。かつて”いつの日か輝くだろう 今宵の月のように”と歌った男が歌う「夜明けのうた」は、とても美しかった。
Official髭男dism「Editorial」
1曲目のタイトルナンバー「Editorial」でこのアルバムにかける思い、覚悟を宣誓する。Official髭男dismにとってメジャー2枚目のアルバムは、ポップミュージックを貫く決意が表れた作品だ。
緻密なアレンジは隙きがなく、同時に緊張感もない。完成された音楽は得てして聞くと疲れるものだけど、とても心地良いものだ。前作「Traveler」から積み上げたものが結実したと言っていい。
「Cry Baby」「パラボラ」「Universe」といったシングル曲、それすら超える「フィラメント」という決定的な名曲。どこを切り取ってもOfficial髭男dismが国民的バンドになったのだと革新させるアルバム。
SHE'S「Amulet」
雨の中を彷彿とさせるインスト「Rained」から「追い風」へと流れていく序盤はまるで映画のよう。
前々作「Now&Then」まではグッドメロディが立ち並ぶベストアルバム感が強かったけど、今は全曲を通してひとつの物語を描いているみたいだ。
これはSHE'Sというバンドに求める音楽が体現されているように思う。形式ではなく、明確にアーティストなのだ。
RADWIMPS「FOREVER DAZE」
野田洋次郎の強烈な個性と、RADWIMPS本来のサウンドスケープの狭間に立つアルバム。キャリアを積むごとに野田洋次郎の色が全面に出るようになってきたけど、これはその極地だと思う。
特にそれを感じたのが「犬じゃらし」「グランドエスケープ」の流れ。どちらも先に発表されていた楽曲で、アルバムではアレンジが施されている。特に「犬じゃらし」はフルオーケストラで、バンドではない。
でもこれは間違いなくRADWIMPSのアルバムで、バンドとしての音楽を持っている。「グランドエスケープ」の直後に流れる「かたわれ」という曲。これこそRADWIMPSでなければ生まれなかった曲であり、「FOREVER DAZE」のハイライトだ。
岡崎体育「FIGHT CLUB」
この人はいつだって何者にでもなれるし、それは「FIGHT CLUB」でも同じ。もはや音楽の枠を超え、というか音楽の枠にいながら、ロバート秋山のクリエイターズ・ファイルや細かすぎて伝わらないモノマネのようになっている。歌いながら、さまざまな役を演じているのだ。
4曲目「Fight on the Web」は痛快だし、5曲目「Quick Report」の美しさの中に秘められた皮肉は、こちらの胸まで痛くなる。
Nothing's Carved In Stone「ANSWER」
筋肉質なバンドサウンドに惹かれて10余年、それは本作でも変わらず。バンドというのは常に理想とする音楽が変わっていくものだけど、ここまで変わらず、一貫性があるのは珍しい。
一貫性という意味ではメロディも同じ。「Beautiful Life」をはじめて聞いたときの高揚感は最高だった。これこそ僕がNothing's Carved In Stoneに求めているものだった。
まずタイトルの「アイラヴユー」がいい。無骨で、分かりやすくて、とてもSUPER BEAVERっぽい。
SUPER BEAVERはメジャーから離れ、10年以上のインディー時代を過ごして2020年にメジャー再契約を果たした。そんな紆余曲折を知っていると、並べられた言葉の数々も説得力がある。
SUPER BEAVERは来月に早くも新しいアルバムをリリースする。最近では珍しいリリースペース。この勢いをもって、今までできなかったこともすべて実現してほしい。
2018年にチャットモンチーを完結させた橋本絵莉子。そこから3年をかけ、ついにリリースされたソロアルバム。
「日記を燃やして」というタイトルの本作には、まさに日記に書かれるような何気ない言葉と、赤裸々な言葉が連なっている。チャットモンチーと似ているようでまったく違う。橋本絵莉子の表現はとどまることを知らないと思い知らされる作品。
特に終盤に配置された「今日がインフィニティ」という楽曲。日記の中に見え隠れする、清々しい宣戦布告。
ロックバンドがドラマや映画、CMとタイアップするのは珍しくないが、あらためて「AMUSIC」の収録曲を見るとタイアップの多さに驚く。それだけ「AMUSIC」までの道のりが濃密だったということだろう。
誰かがどこかで聞いたことのあるメロディが並ぶ全16曲。ちょっと重厚長大で聞くと疲れるのが玉にきずだけど、重厚長大な路線のバンドって最近いないし、唯一無二の存在になれるかもしれない。
コロナウイルスの外出自粛期間中に自宅で作られたデモテープから生まれた楽曲も含む全15曲。前作「スターシャンク」は盟友・根岸孝旨とタッグを組み、がっちりデザインされたサウンドで構築された。
今回はデモテープ発の楽曲もあるからなのか、デザインという意味ではかなりバラバラ。「夜喪女」「Rockstar」がギターサウンド中心だし、「青葉」は合唱コンクールだし、「花咲か仁慈」は沖縄の祭り囃子だ。
これだけ表情の違う楽曲が生まれたのは、自粛期間があったからこそ。コロナのせいで生きづらく、息をするのも難しい時代になったけど、「そんな時代だから生まれた」と言える傑作をCoccoは作ってくれた。このアルバムの中心にドンと構える「潮満ちぬ」を聞いたとき、間違いなく傑作だと確信した。
歴代ユマデミー賞一覧
2000:中村一義『ERA』
2001:GRAPEVINE『Circulator』
2002:奥田民生『E』
2003:エレファントカシマシ『俺の道』
2004:Syrup16g『Mouth to Mouse』
2005:スネオヘアー『カナシミ』
2006:ELLEGARDEN『ELEVEN FIRE CRACKERS』
2007:BUMP OF CHICKEN『orbital period』
2008:Syrup16g『Syrup16g』
2009:GRAPEVINE『Twangs』
2010:レミオロメン『花鳥風月』
2011:Galileo Galilei『パレード』
2012:Galileo Galilei『PORTAL』
2013:RADWIMPS『Xと○と罪と』
2014:米津玄師『YANKEE』
2015:米津玄師『Bremen』
2016:Czecho No Republic『DREAMS』
2017:アシッドマン『Λ』
2018:04 Limited Sazabys『SOIL』
2019:ravenknee『the ERA』
2020:Vaundy『strobo』
2021:Cocco『クチナシ』