2019年のゲーム10作

ネルケと伝説の錬金術士たち ~新たな大地のアトリエ~』

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まず、ガストは2019年に本作に加えて『ルルアのアトリエ』『ライザのアトリエ』と3作品をリリースした。残念ながら『ライザのアトリエ』に事前のプロモーションで匂わせていた“新しさ”を感じる機会は少なかったけど、それでも3つのアトリエを、それぞれ違うアプローチで送り出したことは称賛に値する。

 

その上で、『ネルケと伝説の錬金術士たち』である。アトリエシリーズ20周年記念作品と銘打たれたこの作品は、RPGから一旦離れ、歴代錬金術師の力を借りて街を大きく発展させる、シミュレーションゲームとして生まれた。

 

素材集めは自分で探索することもあれば、仲間に頼むこともあるのだが、必要となる量がとにかく膨大。それ故に、「あの素材が足りない、この素材も足りない…」と四苦八苦することになる。

 

そしてこれがなによりも楽しい。もともとアトリエシリースは、素材がいつも足りなくて、色んなところを探索してヒーヒー言ってたのだ。それを久しぶりに思い出させてくれたのだ。

ロロナのアトリエ』以降、ストーリーを見せることが主な目的となり、ゲームは格段に遊びやすくなった。僕みたいな「あのころは良かったなぁ」なんて考えは結局老いさらばえる運命だったのだ。

でもネルケは悩む楽しさを味あわせてくれた。アトリエに夢を見る当時の僕は、これで成仏できたよ。

 

『荒野のコトブキ飛行隊 大空のテイクオフガールズ!』

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2019年1月から3月にかけて放送された『荒野のコトブキ飛行隊』を元にしたスマートフォンアプリ。ジャンルはレシプロ空戦RPG

 

パイロットと機体を5人揃えたら出撃、実際の戦闘は見ているだけ。非常にシンプルでスマートフォン然としている。それでいてパイロットを1人変えただけで戦況はまったく違うものになるんだから、実はバランスも練られている。

 

なによりアニメに対するメディアミックスとして、想像以上に先々の展開を考えているのが嬉しかった。”アニメの話を追体験”みたいなありきたりな見せ方でお茶を濁すのではなく、ゲームオリジナルキャラクターで再度アニメを作るという双方向的な見せ方だった。

 

しかし同じことを『BanG Dream!』がやっていて、こちらはさらにじっくりと、時間をかけた展開。かたや『荒野のコトブキ飛行隊』は、やや生き急いでいる感がある。これが分かりやすい人気の差なのかも。

 

『DEATH COMING』

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このゲームが最初にリリースされたのは2017年。それから1年半遅れの2019年にSwitchで発売された。それを2019年の10選に選んでいいのかという思いも多少はあるが、まぁ後述にも以前発売された作品の完全版とかあるしいいでしょう。

 

本作は主人公が死神となり、あの手この手で一般市民を殺していく、というアクションパズルゲーム。ファニーなドットグラフィックとは裏腹に、血がぶしゃっと吹き出したり、電気や炎で丸焦げになったりとブラックユーモアが細部に組み込まれている。

 

殺し方のバリエーションも多彩で、屋上にある植木鉢をちょんと押して通行人の真上に落としたり、信号機を狂わせて交通事故を起こしたりと様々。

また、事前に消火栓を壊して水たまりを作り、そこを人が通った瞬間に電気をつけ、感電死させるといった、複数の仕掛けを駆使するやり方もある。ピタゴラスイッチよろしく、すべてが有機的につながれば大量殺人も夢ではないというわけ。

逆に室内に引きこもり、なかなか殺すチャンスがない人も…。チャイムや警報を鳴らしたり、客人を向かわせたり、チャンスを自らの手で掴むのもこのゲームの醍醐味。

 

用意されたステージは全部で7。ひとつのステージをクリアするのに、早ければ30分程度なので、本当に数時間で終わってしまう。もっと遊びたいと思う反面、「もっと遊びたい」と思わせるほどの名作であることも確か。名作であることに気づかせてくれたんだから、腹八分目というのも悪くない。

 

ファイアーエムブレム 風花雪月』

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日本はもとより、世界的に高い評価らしい、この『ファイアーエムブレム 風花雪月』。僕も面白いし、楽しいと思った。しかし同時に、そこまで評価が高くなるか、と驚きもした。

 

この作品は結局のところ、ゲームシステムのところで大きな驚きは特にない。むしろ、いつもの『ファイアーエムブレム』を丁寧に、丁寧に、丁寧に研ぎ澄ました作品だった。

でも、ひょっとしたら現代で求められるのは驚きよりも丁寧さなのかもしれない。僕は惜しくも10選に選ばなかったけど、『バイオハザードRE2』も驚きよりも丁寧さのほうが際立っていた。

 

“みんなが求める、あるべき姿に”というのは、意外と難しい。みんなが求めるものは少しずつ違っていて、最大公約数をはじき出す必要があるからだ。最大公約数を寸分の狂いなく導き出し、それと同時に中盤のダイナミックなストーリー展開という遊び心も加えた。傑作と呼ぶには十分すぎる出来栄え。

 

ドラゴンクエスト XI S』

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確か2年前も『ドラゴンクエストXI』を10選に選んでた気がする。まぁTwitterの話であって、このブログでは関係ない話だけど。

 

2017年にPS4で発売された『ドラゴンクエストXI』をベースにしつつ、3DS版に収録されていた2Dモード、時渡りの迷宮も収録。それと同時にPS4で評判の悪かったボウガンアドベンチャーを思い切って削除するシェイプアップまで敢行。まずはその潔さに驚いたし、これだけ詰めて消してを繰り返してなおプレイのテンポ、バランスが崩れていないことにも驚いた。

 

忘れていけないのがボイスの追加だけど、これも違和感がなかった。というか、ボイスがなかったPS4版に違和感を覚えるべきだったのかもしれない。セリフの節々に、喋らせて感情を表現すること前提の言い回しが度々見受けられた。

 

『オリとくらやみの森』

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Switchは常軌を逸しているハードだ。2019年のソフトリリース数は800本を超えたという。PS4は大体400本前後なので、倍近い推移でソフトの数が日々増えている。ファミコンから始まった家庭用ゲーム機の歴史上、もっともソフトの多いハードになっても驚かない。ていうか、なるだろ、これ。

 

これだけ多いとわけの分からないタイトルも増えてくる。Microsoftの秘蔵っ子とも言える『オリとくらやみの森』もそのひとつだろう。Xbox発のタイトルとして鳴り物入りでデビューしたこのメトロイドヴァニアは、決して派手さはないが着実に評価を高め、満を持してSwitchに登場、日本でも遊びやすい環境になった。

 

昨今のメトロイドヴァニアといえばやはり『ホロウナイト』の印象が強いが、RPGの『ホロウナイト』に対して『オリとくらやみの森』は一撃死のトゲトゲした壁とか、動く床とか、マリオ的な2Dアクションを彷彿とさせる。全体的な完成度で『ホロウナイト』には及ばないが、”これはこれであり”と思わせる個性を持っているのもまた事実だ。

 

ポケットモンスター ソード・シールド』

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ポケットモンスターはきっと世界で一番難しいゲームだ。

こんなにも負けて、こんなにも他人のせいにできないゲームあるんだろうか。

 

「勝てばポケモンのおかげ、負けたら自分のせい」

そんな理不尽な世界に何十万人もいる、異常なゲームだ。

 

最新作の『ポケットモンスター ソード・シールド』は、そんなポケモンが持つ負けるというファクターに過去例を見ないほどスポットライトが当たった作品だ。

本作には両バージョン合わせて10人のジムリーダー、3人のライバル、1人のチャンピオンが登場する。そしてその誰もが、負けたとき悔しさを隠さない。

 

これまで世界中で何百万回、何千万回と繰り返されてきた敗北が、なんだか報われた気がした。

 

『十三機兵防衛圏』

 

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ゲーマーの間で度々話題になる“オープンワールド”の定義、僕は選択の自由だと思っている。いわゆるメインミッションを除いて、東西南北どこからいってもいいし、どんな方法を選んでもいい。『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』が評価されているのは、そこからさらに一段上がって、選択自体を撤廃した点にあると思う。また、2018年の『オクトパストラベラー』は、2DRPGにオープンワールドの定義を当てはめたのが革新的だった。

 

その意味で、『十三機兵防衛圏』はアドベンチャーゲームオープンワールドの定義を当てはめた作品だと思う。10人以上いる主人公の中から、(ところどころに障害はあるものの)誰を選んでもいいし、どういう方法でもいい。そのおかげで、作中で描かれる謎の数々は、プレイヤーによってまったく見え方が違う。いわゆる一本道にもかかわらず。

 

主人公が多いせいもあって、主題がなんなのか、焦点がぼやける瞬間もある。ただまぁ、そこは“考察の余地がある”“2周するモチベーションにつながる”とポジティブにとらえることもできる。

一方で、アドベンチャーゲームに不慣れな人は、焦点がぼやけたままで「次にどのストーリーを見ればいいか分からない」となってしまうかもな。ちょうど「次にどこへ行けばいいか分からない」となるオープンワールドゲームのように。

 

『SEKIRO』

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フロム・ソフトウェアが放つ“和風死にゲー”。最初に発表されたときは同社が過去にリリースした実績を持つ『天誅』か!?なんて言われていたけど、実際はしっかりと『ソウル』シリーズのフォーマットに乗っかっていて、そこはファンの期待を裏切らなかった。いや、『天誅』ならそれはそれで嬉しかったけど。

 

しかし『ソウル』シリーズとの明確な違いもいくつもある。最たる箇所はオンラインを撤廃し、1人で、孤独に戦わなければいけない点だ。

今まではネットを介することでヒントを得られたし、なんなら直接助けてもらうこともできた。本作はとにかく1人で打開しなければならない。

 

先に批判的なことを言わせてもらおう。このゲームは過去の『ソウル』シリーズと比べると、戦い方の幅はかなり狭い。

アイディアで勝負できる機会は少なく、常に真っ向勝負のみ。何回も負けて、敵の動きを覚え、「こう来たら…こう返す!」と、空手の型を習っているような、部活の練習をしているような窮屈な感じは否めなかった。

 

肯定的なことを言わせてもらうと、だからこそ素晴らしいゲーム体験になっていた。まさに体験としてのゲームだ。楽しいでも、面白いでもなく、感動的という感想がもっとも近い。

30回も、40回も負けた果てにラスボスを倒したとき、上述の例になぞらえるなら、部活のインターハイで優勝したような、そんな達成感だったんだと思う。

 

確かにオンラインという楽しさは、このゲームにはない。でも、失くしたことで手に入れたものも、とても大きい。

 

ドラえもん のび太牧場物語

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もうスーパーファミコンの時代から20年以上続いているシリーズなんだから、『牧場物語』を名シリーズと言ってまぁ差し支えないだろう。しかし「ストーリーラインが弱い」という伝統的な弱点もずっとそのまま。弱点を克服するために『イノセントライフ』や『ルーンファクトリー』を生み出してきた歴史がある。

 

ドラえもん のび太牧場物語』も弱点を克服するための一手であり、決定打だと思う。『牧場物語』に映画『ドラえもん』のストーリーラインを敷くことで、やや無機質だったイベントシーンに命が吹き込まれ、大きなモチベーションにつながった。

 

ややシステマチックな話になるが、先のストーリーを見るために、最低限の農作業をやったら昼のうちに寝て、日付を進めるという選択を取れるようになったのだ。

今までだってやろうと思えばやれたけど、残念ながらストーリーの魅力が乏しく、むしろ農作業のほうにモチベーションを作らなければいけなかった。だから夜遅くまで作業して、結果的に冬くらいで飽きる…というのが、『牧場物語』のパターンだった。これ僕だけかな?

 

もちろん『ドラえもん のび太牧場物語』には従来どおり、牧場を徐々に大きくし、お金をため、さらに設備を充実させる楽しみもある。むしろドラえもんひみつ道具によって、カスタマイズ性はより高まっている。

奥行きが生まれた牧場シミュレーションと、飽きとは無縁の感動的なストーリー。ドラえもんが仲間に加わるだけで、ゲームはこんなにも生まれ変わった。発明と言っても決して大げさではない。